第80回話音倶楽部

2016年12月23日(金)


2016年12月23日(金祝) 午後4時開演 
 
【出 演】
片岡道子、松下やよい、本田純子、児嶋絢子、都筑文子 〈 マンドリン、マンドラ、ギター 〉


 
 
今回の話音倶楽部は、クリスマス恒例の運営スタッフによる演奏会です。
例年、たくさんのお客様が聴きにきてくださるのですが、今回も部屋いっぱいの満席でした。

演奏会は松下さんと片岡先生によるマンドリンの二重奏からスタートしました。
曲はオランダの作曲家、エリック・ホルト作曲の「Six Moods'」です。
ホルトさんは頭に浮かんだイメージを曲のモチーフにすることが多いそうで、今回のこの曲も、短い6つの曲がつながっていて、特にタイトルがありません。ただ、冒頭に一言だけ"牧歌的に"とだけあったので、演奏を作り上げる際はこれをヒントに二人で話し合いながらイメージを固めたそうです。はじめは文字通り牧歌的な、広く大きな草原を思わせるようなトレモロのメロディから入り、次第に動きが加わり、大地が動き始めるような緊張感が覆い、最後はお祭りの囃子のような軽快な演奏で終わりました。お客さんも、場面やテンポが変わる度に「いまはどんな情景だろう」と想像しながら聴き入っている様子でした。

2曲目は都筑さんがマンドリンで加わり、三重奏でシェコフ(Ivan Shekov)の「週末のスケッチ」を演奏。
こちらはフルートのために書かれた曲ですが、都筑さんが偶然、楽譜屋さんで見つけて気に入り今回のお披露目となりました。こちらも最初の曲と同じく、短い曲を連続で弾く構成ですが、それぞれにタイトルがついていたので、みなさん楽曲をイメージしやすかったんではないでしょうか。初めの曲は「噴水」。マンドリンが細かな音でクルクル動く様子は、中世のヨーロッパのお城にあるような可愛らしい小さな噴水を思わせるようでした。続く「湖にて」「道化師」「山の夜」と、それぞれがタイトル通りパッと情景が浮かぶような演奏が続き、最後の「回転木馬」は半音階で行ったり来たりする様子がまさにメリーゴーランドのようでした。

3曲目は児嶋さんと片岡先生によるマンドリンの二重奏、リジェーリ(Antoine Riggieri)の「24 Duos」です。
この曲は古典マンドリンによる演奏でした。楽器のつくりもモダンマンドリンに比べシンプルで、ペグがささっているだけなのでチューニングも一苦労のようです。弦の張りも柔らかく、ピックではなく鳥の骨で弾くため、トレモロはもちろんアップもで弾くこともままならないそうです。現代の楽器にくらべ音も小さく繊細で弱々しいのですが、一音一音がふくよかで温かみがあり、モダンマンドリンよりも音の豊かさがあるように感じられました。お客さんも楽器の珍しさや音に引き込まれたようで、演奏が終わったあとのお客さんのざわめきがひときわ大きかったのが印象的でした。

4曲目は吉永さんと片岡先生によるクーシエロ(Prospero Couciello)の「バイオリンまたはマンドリンのための二重奏です。
こちらの作曲家は18世紀に活躍したと作曲家とのことで、直前に演奏された古典マンドリンが作られた時期と重なりますが、こんどはお馴染みのモダンマンドリンによる演奏でした。バロック、古典のシンプルで可愛らしい曲で、曲調が先ほどの古典マンドリンで弾かれた曲と似ていたため、楽器の差がよりわかりやすく感じられた演奏だったかもしれません。一方は繊細で柔らかな音色、一方は張りがあって華やかな音色、みなさんはどちらがお好みだったんでしょうか?

5曲名は児嶋さんと吉永さんによる二重奏で、マンドリンとポルガルギターのデュオで有名な「マリオネット」の吉田剛士さんが、
マンドリニストの柴田高明さんのために書き下ろした「Mandolin 0.024ppm」です。
曲名が何やら見慣れない雰囲気ですが、児嶋さんが説明してくださった内容を引用すると、次のような意味があるそうです。この曲の演奏時間は4分、かたやマンドリンの歴史は300年であり、例えばこの4分の曲を300年分演奏しようとすると41,134,000回演奏しなければならないそうです。「ppm」とはとてもとても小さなものを表す単位で(1%の100万分の1)、マンドリンの歴史300年に対して今日のこの4分の演奏をppmであらわすと「0.024ppm」という数字になるそうです。くり返し繰り返し現れるテーマを何度も演奏するこの曲は、300年ずーっと演奏されることを希望するメッセージがこめられているようでした。

休憩を挟んでワインが入り、後半からはスタッフ全員での演奏になります。

2部1曲目はムニエルの「四重奏ニ長調」。
いまの若い方のレパートリーにはない曲かもしれませんが、繰り返し繰り返し演奏されてきたマンドリンの定番中の定番の楽曲になります。編成もチェロなどを加えたりいろいろなものがありますが今回はマンドリン、マンドラ、ギターでの演奏。ほんとうにそれぞれのメンバーが場所や相手を変えて何度も演奏している曲だけに落ち着いた雰囲気が流れ、特に最終楽章のゆったりとしたロンドは、とても優雅な演奏でした。

2曲目はプレトリウス(Michael Pratorius)の「ブランス(Bransle)」。1597年生まれの作曲家による楽曲です。
「テレプシコーレ舞曲集」という曲集の中に納められた舞曲で、宮廷で踊られる舞曲というよりは、野外でみんなで楽しく踊る舞曲だったそうです。数分の短い演奏でしたが、当時はこれをアレンジを加えて何度も何度も演奏し、朝まで踊り明かしたのではないかとイメージが膨らみました。

最後はLars Wuller作曲の「ノイエンブルクの印象」。
毎年、ドイツのオットワイラーで開かれるセミナーで、ギターの五重奏として演奏されていたのを児嶋さんが聴き、ぜひマンドリンで弾いてみたいとのことで今日の演奏会でとりあげることになりました。作曲者は1975年生まれのオランダのギタリストで、2009年にノイエンブルクで開かれたギターフェスティバルの際、あまりにもノイエンブルクが美しかったため、その印象を残したいとフェスティバルの最中にこの曲を書き上げたそうです。静かで美しいメロディが、まるでクリスマスマスソングを思わせるような雰囲気の曲で、今日のこの演奏会にぴったりとマッチしていました。

そしてアンコールはレオン・イエッセル「おもちゃの兵隊」。
曲名からはピンとこないかもしれませんが、あの「キューピー3分クッキング」のオープニングテーマの曲だと言えば、誰もがすぐにメロディを思い浮かべることができるのではないでしょうか。可愛らしい軽快な曲想で、マンドリンが高音でクルクル動き回る様子は、見ているだけでも楽しめました。

そのまま続いて「きよしこの夜」、「ジングルベル」とクリスマスメドレーでフィナーレ。

来年もスタッフ一同頑張りますので、ぜひ応援のほどよろしくお願い申し上げます。   (石田政章 記)
 
●プログラム● -------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

 

 

-------------------------------------------------------------------------------------------------------------
 
***************************************

~~ 出演者から ~~

■ 片岡道子
今年も無事に皆が健康で最後のコンサートを迎えることができました。
スタッフの皆様の力と、温かく見守ってくださるお客様のおかげで80回を重ねてきました。

沢山の素晴らしいプロ奏者にご協力いただき、毎回が感激の演奏会になります。
そして、その都度たくさんの事を勉強させていただき、吸収できる幸せをかみしめています。
来年も、また地道にマンドリン音楽に取り組んでまいります。

感謝の気持ちを込めて「今年一年ありがとうございました!」
来年もよろしくお願いいたします。

■ 松下やよい
今年最後の話音倶楽部が無事終了しました。たくさんのお客様にお越し頂き、
先生やステキな仲間との演奏、楽しく嬉しいひとときでした。
お手伝いの仲間にも助けてもらい、皆様ありがとうございました。
今回は第80回、本当に音楽を愛する沢山の皆様が支えてくださったお蔭と、感謝の気持ちでいっぱいです。
これからも皆様に気持ち良く楽しい時間を過ごして頂けるよう、お手伝いさせて頂きたいと思います。
来年もどうぞよろしくお願い致します。

■ 本田純子
コンサートの日はいつも、片岡マンドリン研究所が素敵な音楽と出演者の方々やお客様の笑顔で溢れています。
2016年もそんな話音倶楽部に携わることができて、嬉しいです。
年末のコンサートはスタッフみんなが多忙な中、なかなかそろって練習することができなかったり、
メンバーが欠けて寂しい思いもありましたが、本番が無事終了してほっとしました。
いつも暖かく見守ってくださるお客様、お手伝いの皆様、本当にありがとうございます。心から感謝いたします。
2017年の話音倶楽部も、すでにいくつかの企画が進行中です。
楽しいコンサートが開けるように努めてまいりますので、どうぞよろしくお願い致します。

■ 児嶋絢子
私にとって話音倶楽部は(研究所は)勝手にホームのような気がして行くととても安心します。
片岡先生はじめ皆様の温かさに感謝です。
古い楽器もまた弾くチャンスを与えて下さりありがとうございます。色々発見も多く、また勉強させて下さい。

■ 都筑文子
毎年恒例の12月23日の話音倶楽部は今回なんと第80回でした。
回を重ねてきたこのホームコンサートでは、今年一年もたくさんの演奏家の皆さまをお迎えしました。
素敵な音楽を身近に触れる機会を、そして12月には自身が演奏する機会をと、毎年変わらずに貴重な経験をさせていただき、とても感謝しています。
来年も出演者の方々、お客様、スタッフと共に話音倶楽部を盛り上げて行きたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 
***************************************

-------------------------------------------------------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------------------------------------------

80waon-chirashi

 今年も1年の締めくくり年内最後の話音倶楽部は 実行委員の演奏でお楽しみください!