片岡マンドリン研究所
話音倶楽部
2013年09月28日  第67回話音倶楽部

午後4時開演

出 演: 伍芳<ウー・ファン> (中国古筝)
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日本人なら誰でも馴染みのある楽器「お琴」ですが、そんな日本の「お琴」が実は中国発祥だったということはご存知でしたか?
本日の話音倶楽部は、日本の琴のもとになった楽器「中国古筝(こそう)」の演奏家であり作曲家でもある伍芳(ウー・ファン)さんをお迎えしました。

艶やかなピンクのチャイナドレスで登場した伍芳さん。
自己紹介も兼ねた一曲目は「彝族舞曲」。この曲は、中国民族の一つである彝族(いぞく)の若い男女が、月明かりの下で一緒に踊る風習をもとに作られた曲だそうです。日本の琴よりずっと柔らかい古筝の音色と伍芳さんのしなやかな演奏が部屋いっぱいに広がります。

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「こんなにアットホームな演奏会は初めてかもしれない」と伍芳さん。演奏の合間に、それぞれ曲のエピソードをお話して下ったのですが「間近で目線が合って恥ずかしい」と必死で遠くを見たとのこと。それでも「今日は話音倶楽部だから…」とたくさんのお話して下さいました。

伍芳さんによると、日本の琴は唐の時代、遣唐使がきっかけになって出来たとのこと。
中国で琵琶を習っていた遣唐使が、琵琶の師匠の娘と恋に落ち、その娘と結婚して日本に連れ帰った。その娘は実は古筝の名手だったため、日本に持ってきた古筝が後の「お琴」のもとになったと。その二人の恋がもとになって日本の琴が生まれたなんて、とてもロマンティックな楽器の伝来ですね。

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そんなお話をはさみながら伍芳さんの演奏は続きます。
250年前の民謡をもとにした「月児高」、日本の唱歌で、中国ではテレサ・テンさんが歌ったことで有名な「里の秋」。ゆらゆらと湖面をすすむ船をイメージした「太湖船」。チベットの民謡をもとにした激しい曲「雪山春暁」。中でも「太湖船」は伍芳さんの歌う中国語の響きが古筝の演奏と相まって
とても印象的でした。


          ここでワインを頂きちょっと休憩。後半へと続きます。

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前半は古典を交えた伝統的な曲が多かったですが、後半はぐっと現代的になります。
まずは「花咲く旅路」。桑田圭祐さんの作曲でJR東海のCMでもおなじみ。中国語バージョンもあるくらい中国でも人気の曲とのことで、古筝の演奏とも相性ぴったり。 古筝のしなやかな響きが、 ゆったりと進む旅路を連想させます。

ちなみにこの「花咲く旅路」、 伍芳さんも大好きとのことで、 ご自身のベストアルバム『万華鏡』の一曲目にも選んだそうです。 このアルバムには「花咲く〜」を京都の南禅寺で演奏する伍芳さんの映像がおさめられているんですが、 暖かい雰囲気とは裏腹に撮影は真冬の早朝! だったそうです。「氷点下で必死に微笑んだ」とココだけの話を披露して頂きました。

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続く「My Passion」は京都に住む作曲家、西邑由記子さんが伍芳さんのために作った現代曲。
いままでの柔らかい演奏とはうって変わったリズムの曲で、伍芳さんも「呼吸が苦しい」と言うほど情熱的な演奏でした。

呼吸を整えたあとは「翡翠河」、「彩虹橋」の二曲。いずれも伍芳さんのオリジナル。
「翡翠河」は現地を訪れた伍芳さんが「言葉にできないくらい美しかった」との思いを古筝で表現したとのこと。「彩虹橋」は神戸で震災で亡くなったお姉さんとの思い出から生まれた曲だそうです。お姉さんが大好きだった神戸で、六甲山から二人で見た夜景の思い出を振り返ったとき、虹の橋が見えたそうです。「橋を渡ったら姉に会えるんじゃないか…」そんな風に思ったそうです。「みんなが持っている届かない思いが、その橋を渡ることで叶う」そんな橋があればいい。伍芳さんの強い思いがこもった、悲しい、でも美しい曲でした。

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最後は「戦台風」。 タイトルからも激しさが想像できますが、これは"文化大革命"に巻き込まれた伍芳さんの師匠が、辛い日々に耐え忍びながら書いた曲とのこと。 その精神力の強さが現れたダイナミックな曲で、とても興奮する、元気を与えてくれるような素晴らしい演奏でした。

アンコールは「赤とんぼ」。秋の夜長にぴったりの心地よい締めくくりでした。     (石田 記)

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            伍芳<ウー・ファン> (中国古筝演奏家・作曲家)
                      Wu-Fang

       Official Website : http://wu-fang.com
       Facebookページ : http://www.facebook.com/WuFangOfficial


●プロフィール● -----------------------------------------------------------------

伍 芳 <ウー・ファン>Wu-Fang  〜中国古筝演奏家・作曲家〜

中国・上海生まれ。9歳より中国古箏の第一人者、王昌元氏より手ほどきを受ける。その後、中国で最も難関といわれる上海音楽学校に入学。郭雪君氏に師事し、古箏を中心にピアノや音楽の基礎理論などを幅広く勉強する。
1990年7月同校を首席で卒業し、来日。1996年9月に東芝EMIよりデビュ-アルバム「箏心」をリリ-スする。日本における現在の中国楽器ブ-ムの先駆けとなる。
その間、南こうせつ氏、伊勢正三氏、東儀秀樹氏(雅楽師)、中西俊博氏(ヴァイオリン)、木乃下真市氏(津軽三味線)、西村由紀江氏(ピアノ)、溝口 肇氏(チェロ)など数々のア-ティストと共演。多数のTV・ラジオ出演のほか、2002年には古谷一行氏の朗読とのコラボレ-ション(言の葉コンサ-ト・ツア-)、狂言、人形浄瑠璃文楽、和太鼓との共演、皇太子様、雅子様の前での御前演奏等々、意欲的な演奏活動を行っている。また、さだまさし原作の映画「精霊流し」に音楽で参加している。
2004年2月25日には、映像付きの初めてのベストアルバム「万華鏡」をリリ-ス。同年5月には、ハワイにてグラミー賞受賞アーティストのSAX奏者、KENNY Gと共演し、高い評価を得る。これがきっかけとなり、同年7月のKENNY G JAPAN TOUR全箇所にゲストとして参加する。2006年5月には、ドイツBambergで開催された「EuroFestival Zupfmusiku2006」に参加し、絶賛される。
近年、教育活動にも積極的に取り組み、古筝教室を開き古筝の普及にも努めている。
2010年上海万博においては、オリジナル曲を中心とした音楽劇「彩虹橋」で公演を行い、故郷である上海で自身の音楽活動にエポックを画するようなイベントとなる。そして同年12月には、その音楽劇の再演を神戸で実現する。公演では音楽劇バージョンのオリジナル曲「彩虹橋」が好評を博し、その曲が収録された通算10枚目のアルバム「神戸チャイナ倶楽部」を2010年12月8日に発売。2011年4月10日からは、ABCラジオにて毎週日曜日の朝8時40分〜9時まで「伍芳(ウーファン)のふらっと♪阪神沿線」でパーソナリティを務める。
現在は、中国の古典、現代曲だけにとどまらず、様々なジャンルに挑戦、一方で、自演はもちろん他のア-ティストへの楽曲提供など、作曲活動にも力を注ぐ。独自の音楽世界<ウ-・ファンワ-ルド>は歩みを止めることなく、その確実なテクニックと美しい音色で聴衆を魅了し続けている。
                          
Official Website : http://wu-fang.com
Facebookページ : http://www.facebook.com/WuFangOfficial

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第67回話音倶楽部には、中国伝統の宮廷楽器<古筝>の演奏家・作曲家として
国内外で活躍する伍芳<ウー・ファン>さんをお迎えします。
麗しい古筝の調べ〜〜〜心に響くエレガントな音楽をご堪能ください。