午後4時開演
出 演: 益田 正洋 (ギター)
今回の話音倶楽部は、クラシック・ギタリストの益田正洋さんをお迎えしました。
アルベニスの「入り江のざわめき」でコンサートが始まると、会場が異国の雰囲気に包まれました。
「入り江のざわめき」は港町マラガの踊りをもとに作られた曲だそうです。
2曲目も同じくアルベニスで「グラナダ」。アンダルシアの都市の情緒漂う演奏でした。
前半はスペイン南部のアンダルシア地方の音楽を聴かせてくださるとのお話があり、それぞれの曲についても丁寧に解説してくださいました。
次の曲はJ.アルカス「ムーア人の織物による幻想曲“ハバナのプント”」。「プント」とはpointのことで、点描などの意味があるそうです。
続いてのE.グラナドス「スペイン舞曲第2番“オリエンタル”」は、とても難しい曲で、二重奏で演奏されることが多いのだそうですが、益田さんはもちろんお一人で演奏されました。ギタリスト藤井眞吾氏の編曲とのことです。とてもお一人で弾いているとは思えない奥行きのある、溜息が出るような演奏でした。
お話をはさみ、次はF.タレガの作品で、遺作「エンデチャとオレムス」と「アラビア奇想曲」です。
「アラビア奇想曲」は「アルハンブラ宮殿の思い出」と同時期に書かれた曲だそうです。哀愁の漂う美しいメロディーをしっとりと聴かせてくださいました。
第一部最後の曲は、J.トゥリーナの「セビリアーナ」です。この曲はセゴビアが手を加えたものが一般的だそうですが、今回は原典版に基づいたものを演奏してくださいました。スペイン・アンダルシアの情熱的な音楽を演奏される姿はとても素敵でした。
ここでワインサービスです。
益田さんもワインとチーズを召し上がりながら、休憩中にもかかわらずお客様やスタッフと気さくにおしゃべりを交わしてくださいました。
第2部はスペインの北、フランスとの国境近いカタルーニャ地方の音楽を聴かせてくださいます。
1曲目はF.ソルの「魔笛の主題による変奏曲Op.9」です。益田さんは20年前、13歳の頃にデビューされましたが、この曲は子供の頃からよく聴き、よく弾いていたそうです。お客様もほとんどがご存知の曲だったと思いますが、益田さんの肌に馴染んだ演奏は、とても心地よく感じられました。
この作曲家ソルは自由主義のフランス革命に憧れた人で、次の曲のタイトルにあるゴヤも同じ自由主義者だとお話してくださいながら、グラナドス「ゴヤのマハ」の演奏に移っていきます。ゴヤの描いた粋な女性の絵画からグラナドスがインスピレーションを受けて作られた曲だそうです。展覧会で絵画鑑賞をしているようなお話と演奏の流れは、大変興味深いものでした。
ワインを召し上がったにもかかわらず、益田さんは変わらず素敵な演奏を聴かせてくださいましたが、実は本番中にワインを飲んだのは初めてだそうです。
たくさんの貴重なお話と素敵な演奏で、あっという間に最後の曲になってしまいました。
最後はグラナドス「詩的ワルツ集」。くるくるとイメージの変わる小さなワルツが集められて、最後にもう一度最初の旋律が現れます。一つひとつのワルツはロマンティストだったグラナドスが描写した様々な女性像だったのでしょうか。そんな楽しい想像をしながら、聴かせていただきました。
アンコールは、グラナドス「献呈(エピカトリア)」が終わっても拍手が鳴り止まず、
もう1曲、バッハの「プレリュード」も演奏してくださいました。お客様もこのサービスには満足されたのではないでしょうか。
とても興味深く楽しいお話と、素晴らしい演奏で楽しませてくださった益田さん、
本当にありがとうございました。
日々、演奏活動にお忙しくお過ごしのことと存じますが、
今後も更なるご活躍を楽しみにしています。 (本田 記)
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比留間賢八が
1901年(明治34年)に
ヨーロッパから持ち帰ったギター
(1843年 ベルフーモNO。197)
を手にする益田正洋さん
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付随記事
片岡道子の日記
「2011年09月26日 比留間賢八のギター」
http://www.kataoka-mandolin.jp/michikos-diary/2011/09/post_3010.html
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●プログラム● -----------------------------------------------------------------
第Ⅰ部
入り江のざわめき ・・・I. アルベニス
グラナダ ・・・I. アルベニス
ムーア人の織物による幻想曲“ハバナのプント” ・・・J. アルカス
スペイン舞曲第2番“オリエンタル” ・・・E. グラナドス
エンデチャとオレムス ・・・F. タレガ
アラビア奇想曲 ・・・F. タレガ
セビリアーナ(原典版に基づく) ・・・J. トゥリーナ
第Ⅱ部
魔笛の主題による変奏曲Op.9 ・・・ F. ソル
ゴヤのマハ ・・・E. グラナドス
詩的ワルツ集 ・・・E. グラナドス
アンコール
献呈(エピカトリア) ・・・E. グラナドス
プレリュード ・・・J. S. バッハ
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益田正洋
(クラシック・ギタリスト)
Masahiro Masuda Official homepage http://www.masahiromasuda.com
●プロフィール● -----------------------------------------------------------------
益田正洋 (クラシック・ギタリスト)
長崎県長崎市生まれ。幼少時に両親の手ほどきによりギターを始める。
第20回クラシカルギターコンクール入賞。審査委員長の伊福部昭氏より審査員特別賞を授与される。90年、第21回クラシカルギターコンクールにて史上最年少で第一位を受賞。92年に第35回東京国際ギターコンクールにて入賞を果たす。03年にはバーネットファミリー財団国際ギターコンクール(アメリカ・シカゴ)にてファイナリストに選ばれる。
91年のデビューリサイタルを皮切りに、これまで国内外にてソロ・リサイタルを行なう。またJGA音楽祭や(社)日本ギター連盟法人設立30周年記念ガラコンサート、東京国際ギターコンクール記念ガラコンサートなどでも客演を行う。
長崎大学経済学部を卒業後、2000年9月、ジュリアード音楽院修士課程に入学。2001年、ロドリーゴ生誕100周年記念コンサートのコンチェルト・ソリストとして、ニューヨーク・リンカーンセンターにて海外デビュー。J.デプリースト(元東京都響常任指揮者)指揮、ジュリアード・シンフォニーと共演。アランフェス協奏曲を好演する。2003年、作曲家ウェイ・チェイ・リン氏の委嘱により台湾・台中市にて同氏のギターソロ曲(Seven Diaries)を世界初演。2003年5月にジュリアード音楽院・修士課程を卒業、帰国し演奏活動を再開する。
95年「デビュー〜21世紀への鼓動〜」でCDデビュー。2010年12月時点で8枚のCDをソロアルバムをリリース。近現代のギター作品を収録した「プログレッション」、古典・ロマン派の隠れた名曲に光を当てた「カンタービレ」、邦人として初めてのレニャーニ・36のカプリスを全曲収録した「36のカプリス」、20世紀の巨匠セゴビア没後20年に寄せた「セゴビアへのオマージュ」、南米の大作曲家、ヴィラ=ロボス没後50年にちなんだ「ヴィラ=ロボス・ギター作品集」、各時代のソナタを集めた「SONATA」、J.S.バッハ作品集の「Bach on Guitar」をリリースし、レコード芸術誌上にて特選盤に選ばれた。2011年2月には9枚目のスペイン・アンダルシア地方にテーマを絞った新CDをリリース。10枚目を記念した「ベスト盤」も計画中。
またクラシック音楽普及活動の一環でもあるアウトリーチコンサートにも積極的で、現在、公共ホール音楽活性化事業支援アーティストとして活動を続けている。
現在、実力派ギタリストとして注目度も高く、室内楽にも意欲的に取り組むなど、その活動が音楽雑誌やマスコミにも多く取り上げられている。
益田正洋公式ホームページ; http://www.masahiromasuda.com
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ソロ、室内楽、他楽器との共演、アウトリーチ活動など
積極的に演奏活動されている益田正洋さんが、話音倶楽部に登場くださいます!
若手実力派ギタリストの演奏に注目です!!