片岡マンドリン研究所
話音倶楽部
2011年05月08日  第58回話音倶楽部

午後4時開演

出 演: 加藤 雄太 (コントラバス)
     中島彩也香 (ピアノ)
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今回の話音倶楽部は、コントラバス奏者の加藤雄太さんをお招きしました。

ショスタコーヴィチの「アダージョ」でコンサートがスタートすると、室内はあっという間にコントラバスの重厚な音色で包まれます。
2曲目のグラナドス「ゴイエスカスの間奏曲」はチェロの譜面から編曲したそうで、
3曲目ラフマニノフ「エレジー作品3」は、もとはピアノ小品だそうです。
コントラバスというとどうしても低音の楽器というイメージがありますが、他の楽器の為に書かれた曲もこんなに演奏できる、幅広い可能性を持つ楽器だということがわかります。
1部最後の曲はコントラバスオリジナルの曲「ソナタ2番ホ短調より1,2,4楽章」です。作曲者のミシェクはチェコのコントラバス奏者ですが、この曲はコントラバス奏者にとって弾きにくい曲なのだとか。でもそんなことを感じさせない、若々しくエネルギッシュな演奏でした。

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お話の少なめだった前半でしたが、本当はもっとお客様にリラックスして聴いて欲しかったとのことで、ワインサービスのあとは加藤さんが近況などもお話しくださいました。
実は加藤さんは、この話音倶楽部の前日までロシアのオーケストラに参加されていて、新潟から東京に戻られたばかりというハードスケジュールでした。ロシアのオーケストラ団員は、皆お酒が大好きで、加藤さんも朝までお付き合いしていたんだとか。
また、コントラバスはオーケストラの調弦とソロの調弦が異なり、ソロの調弦のほうがハイポジションを弾きやすい調弦になっているとご説明くださいました。
昨日まではオーケストラの調弦、今日はソロの調弦で演奏というのは、とても難しそうな印象を受けますが、コントラバス奏者にとってはそれが当たり前のようです。

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2部最初の曲は、カラーチェの「ロンド」。マンドリンではおなじみの曲です。大きな楽器で演奏されているのに、とても軽快で、コントラバスの新鮮な魅力が感じられました。
次の曲はロシアの作曲家グリエールの「インテルメッツォとタランテラ」です。インテルメッツォは情感豊かな曲で、コントラバスの音色が身体の奥にまで沁み入るようでした。続けてタランテラを途中まで演奏したところで、弓の調子が悪くなって演奏を中断せざるを得ないトラブルが。弓に塗った松やにが暑さのため溶けて滑ってしまい,テンポの速いタランテラを弾くことができなくなってしまったそうです。この日は5月なのに蒸し暑く、室内には熱気がこもっていて、加藤さんもずっと汗びっしょりで演奏されていたのです。
ここでエアコンの温度を下げたり、扇風機を出してみたりして、熱気を冷ましました。

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タランテラを演奏するには弓のコンディションが悪いので、アンコールのために用意されていたウォルトンの「deep song」先に演奏されました。
次の曲はプログラムに戻って、ボッテシーニの「『夢遊病の女』幻想曲」。この曲はベッリーニのオペラ「夢遊病の女」の歌をモチーフにしたヴァリエーションだそうです。とても聴きやすい一曲でした。
このあと、もう一度弓の調整をされてから、最後の曲ボッテシーニの「カプリッチョ・ディ・ブラヴーラ」を演奏してくださいました。

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コントラバスという大きな楽器の演奏を間近で聴くことができて、コントラバスのたくさんの魅力が感じられたコンサートでした。
弓のトラブルがありながらも最後まで演奏してくださった加藤さん、ありがとうございました。
加藤さんは6月からドイツ・ミュンヘンに留学されますが、またいつか話音倶楽部で「タランテラ」を演奏すると約束してくださいました。                           (本田 記)

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●プログラム● -----------------------------------------------------------------

第Ⅰ部
 アダージョ  ・・・D.D.ショスタコーヴィチ
   Adagio  ・・・Dmitrii Dmitrievich Shostakovich

 ゴイエスカスの間奏曲  ・・・E.グラナドス
   Goyescas Intermezzo  ・・・Enrique Granados y Campiña

 エレジー 作品3  ・・・S.V.ラフマニノフ
   Elegy  ・・・Sergei Vasil'evich Rachmaninov

 ソナタ2番 ホ短調 より1.2.4楽章  ・・・A.ミシェク
   Sonata No.2 in E minor  ・・・Adolf Misek

第Ⅱ部
 ロンド  ・・・R.カラーチェ
   Rondo  ・・・Raffaele Calace

 インテルメッツォとタランテラ  ・・・R.M.グリエール
   Intermezzo and Tarantella  ・・・Reinhold Moritsevich Gliere

 「夢遊病の女」幻想曲  ・・・G.ボッテシーニ
   Fantasia Nell’opera “La sonnambula” de Bellini  ・・・Giovanni Bottesini

 カプリッチョ・ディ・ブラヴーラ  ・・・G.ボッテシーニ
   Capriccio di Bravura  ・・・Giovanni Bottesini

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       第58回話音倶楽部 加藤雄太
                加藤 雄太
               (コントラバス)

●プロフィール● -----------------------------------------------------------------

加藤雄太 コントラバス
1987年兵庫県生まれ。15歳よりコントラバスを始め、2009年桐朋学園大学音楽学部を卒業。
2004年タングルウッド音楽祭にスカラシップを得て参加したのをはじめ、インチョン&アーツ、ラ・フォル・ジュルネ、バイロイト音楽祭、別府アルゲリッチ音楽祭、小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトⅨ・Ⅹ、サイトウ・キネン・フェスティバル「青少年のためのオペラ」等に参加。
ボルドー音楽祭にてロラン・ドガレイユ、ミシェル・ミカラカコス、ロラン・ピドゥー、パトリック・ジグマノフスキーらとシューベルトの「ます」やサン=サーンスの「動物の謝肉祭」を共演した他、ミッシャ・マイスキー60歳記念プロジェクト、鎌倉芸術館ゾリステン、レインボウ21、シャネル・ピグマリオン・デイズ・クラシックコンサート等に出演。
これまでに故・都筑道子、西田直文の両氏に師事。

中島彩也香 ピアノ 
国立音楽大学附属小・中・高等学校を経て国立音楽大学演奏学科(ピアノ)を卒業。在学中、鍵盤楽器ソリストコースに在籍。卒業演奏会、コース修了演奏会出演。本学国内外奨学生としてニース夏期国際音楽アカデミーに参加し、F.アントルモン、J.マリー=コテの各氏に指導を受ける。本学にて、長岡純子、練木繁夫、若林顕、ダンタイソン、M.ベロフの各氏の特別レッスンを受講。現在、同大学院修士課程2年在学中。
第12回日本クラシック音楽コンクール第2位(第1位なし)。第3回大阪国際ピアノコンクール第1位、ジャーナリスト賞。第2回北本ピアノコンクール第1位(全部門最優秀賞)。2006年東京フィルハーモニー交響楽団と共演。2010年11月には、日野市主催ショパン生誕200年コンサートに出演、好評を博した。
これまでに若崎久美子、奥村京子、小畠伊津子、小畠康史、花岡千春の各氏に師事。

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第58回話音倶楽部チラシ

これから世界に向かって大きく羽ばたいていこうという24歳。
若きコントラバシストの加藤雄太さんをお迎えします。
コントラバスの心にしみる低音の響きと、驚きの超絶技巧にご期待ください!!