午後7時開演
出 演: Duo Trekel & Tröster
シュテフェン・トレッケル Steffen Trekel (マンドリン)
ミヒャエル・トレスター Michael Tröster (ギター)
今回の話音倶楽部のゲストは、マンドリンとギターのデュオ、シュテフェン・トレッケルさんとミヒャエル・トレスターさんです。
お二人ともドイツを代表する音楽家ということで、お客様も超満員。なんと今日の演奏を聴くためだけに、はるばる札幌から来られたお客様もいらっしゃいました。
まずは挨拶代わりにロマルディのシンフォニアを演奏。
ドイツマンドリン特有の柔らかい音色で、自由で滑らかに装飾を弾く様子が印象的でした。
演奏が終わると、トレスターさんからご挨拶と曲の紹介です。
もちろんドイツ語ですので、現在ドイツでトレッケルさんにマンドリンを師事されている児嶋絢子さんに通訳をお願いしました。児嶋さん、ありがとうございます。
次はムニエルのワルツコンチェルト。
日本ではお馴染みのレパートリーですが、ドイツではほとんど演奏されることがないそうです。
弾き終わって一息ついたトレスターさんが一言。「この曲が作られたイタリアはとてもホットな国です…この部屋と同じで(笑)」 なにしろ、奏者とお客さんとの距離が30cmもないくらい超満員ですので、ムニエルのような技巧の激しい曲を弾くと部屋の温度がぐっと上がります。
3曲目は落ち着いた雰囲気で「3つの小品」。先ほどとは打って変って優雅なウィーン風の演奏です。作曲者のアルソフは19世紀のマンドリン演奏家で、トレッケルさんの故郷に近いドイツのドルトムントで生まれたそうです。
続いて、ミゲルの「夏の組曲」へ。
トレスターさんが夏の公園を散歩していて思いついたそうで、モチーフは「恋」というだけあって、とてもロマンティックな曲でした。演奏が終わると「彼と私は同一人物なんだよ」とトレスターさん。ミゲルとはトレスターさんが作曲する際のペンネームだそうです。私を含め、知らなかったお客様も多く、みな驚いた様子でした。
そして前半のトリはガーシュウィンの「3つのプレリュード」。
言わずと知れたジャズの名曲ですが、こういった曲はお得意なのか、お二人の演奏はなんとも切れ味がよく、とってもスィングしていました。ガーシュウィンは作曲家として無名の時期が長く、ずっと楽譜屋さんで働いていたというエピソードを紹介してくださいました。初見が利くので、お客さんが探している楽譜をすぐその場で弾いてくれたそうです。ガーシュウィン本人が演奏してくれるなんて、なんとも贅沢な話ですね。
そして話音倶楽部恒例、ワインを頂きながらの休憩タイム。
演奏もさることながら、一曲一曲のエピソードが興味深く、お客様同士の会話に花が咲きます。
お酒が入って一層の熱気の中、後半がスタート。1曲目はデンテロの「ソナチネTNT」。
「TNT」とは聞きなれませんが、これは「トレッケル・アンド(und)・トレスター」の略、すなわちお二人のことだそうです。
デンテロさんはお二人の古くからの友人でブラジル在住。ブラジル人作曲家ということでショーロのようなスタイルの曲を想像しましたが、実際の曲は、クラシックやジャズなど色々な要素を取り込んでいて、ピアソラを思わせるような雰囲気でした。
そしてトレスターさんのギターソロへ。
演奏された「エチュード」、「プレリュード」の2曲ともトレスターさんの作曲。どちらもご自身の生徒の為に作ったとのこと。
「エチュード」は練習曲というより、まるでロックのような曲。というのもこの曲は「エレキのテクニックをクラシックに使いたい」という生徒さんのリクエストに応えて作ったそうで、深夜のディスコで思いついた?!そうです。
「プレリュード」もタッピングを多様した現代的な曲で、ずいぶんとオシャレな練習曲でした。こんな曲ならとても練習が楽しそうです。
いよいよ最後はアングロの「古い思い出」。
メキシコ人作曲家のアングロが彼の両親を思って書いた曲だそうです。前半の静かでどこか悲しげな曲想は母を、後半の勇壮な部分には父を感じるような、とても気持ちのこもった素晴らしい演奏でした。
通常のプログラムはここでお終いですが、お客様の拍手が鳴りやまず、お二人もそれに応えに応えて、なんとアンコールに計5曲も演奏してくださいました。「いくらでも弾けるよ」との素晴らしいサービス精神に感激です。ありがとうございます。
まずトレスターさん作曲の「リフレクション6番3楽章」。
オシャレでマンドリンに映える楽しい曲で、トレッケルさん曰く「今日持ってきたCDにも収録されています。買って頂けるとトランクが軽くなるからよろしく(笑)」と。
そして次は「プレイヤー(祈り)」。
作曲者の名前が聞きとれずわからなくて申し訳ないのですが、ニューヨークの現代作曲家の作品とのことです。とても歌いやすいメロディの豊富な曲でアンコールにはピッタリでした。
3曲目はフィラ「スペイン舞曲」。
お馴染の曲ですが、アレンジがお二人のオリジナルで、マンドリンがとても映えるようになっていました。ここまでにもう何曲も弾いているのに、これまた火の出るような激しい演奏に会場もとても盛り上がりました。
4曲目は映画音楽です。ジョン・ウィリアムスの「シンドラーのリスト」。
よく知ったメロディーのしっとりとした演奏にみなさんぐっと聞き入っている様子でした。
そしてアンコール最後の曲。
ジャズのオリジナルだったのですが、こちらの曲名も聞き取れませんでした。申し訳ありません。
今までたくさんのデュオを聴いてきましたが、とにかくお二人の演奏は息がぴったりで素晴らしいです。決め所で自然と見つめ合う姿がとても印象的でした。
まだまだ引出しはたくさんあるとのことです。是非、次の機会をお待ちしております。
(石田 記)
●プログラム● -----------------------------------------------------------------
--------------------------------------------------------------------------------------
マンドリンのシュテファン・トレッケルさんとギターのミヒャエル・トレスターさんのデュオが
話音倶楽部に登場です!
ドイツからの音の響きと、おふたりの息の合った演奏を、どうぞお楽しみください。