片岡マンドリン研究所
話音倶楽部
2008年04月20日  第45回話音倶楽部

午後4時開演

出 演: 宮武省吾(マンドリン&マンドラ)
     桝川千明(マンドリン)
     小林 薫 (マンドロンチェロ)
     片岡道子(マンドリン)

今回の出演者はみなさん有名なマンドリン奏者の方ばかりだったせいもあり、超満席状態でのコンサートでした。お客さん同士もお弟子さんや知り合いが多く、一人、また一人と来場される度に挨拶大会が始まって大騒ぎ。

部屋いっぱいに席を詰めたので「こんなに近くで演奏するんですか?!」と困惑されるお客さんも。それは奏者とっても同じ。リハーサルの時に「こんなに近かったら楽譜がのぞかれてしまう」と演奏席と客席とを座り比べて苦笑なさる場面も。奏者もお客さんも同じ緊張感を味わえるのはこの話音倶楽部ならではです。そんないつも以上のスゴイ熱気の中でコンサートがスタートしました。

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1曲目は宮武省吾さんと片岡道子先生の二重奏で、モーツァルトの「ウィンナーソナチネ」。
この曲は有名で様々な楽器に編曲版がありますが、今回はヴァイオリン用の編曲から。モーツァルトらしい颯爽とした和音で一楽章がスタート。お二人の流れるような演奏が終わるころには、すっかりお客さんも緊張が解け、音楽を楽しんでいるようでした。ちなみに宮武さんがこのとき楽器と膝の間に置いていたクッションは、なんと!医療用の足枕だそうです。なんでも、とてもフィット感がよいのだとか。興味を持った方はお試しあれ。

2曲目は内藤正彦氏の作品から。
客席にご本人がお見えでしたので、作曲者に見守られながらの演奏となりました。いくつかの小品からなる楽曲で、1曲目は「月学」。水面に映る月を思わせるような静かで、そして可憐な曲でした。2曲目は「海鳴り」。海鳴りとは秋の季語で、嵐の前に海から響く音だそうですが、まさに嵐の前の静まりかえった海に、小さく音がこだまするような曲でした。その後「タンゴ」、「石畳」、「冬虫夏草」、「虫媒花」と続くのですが、中国風のメロディであったり、スケルツォ的であったり、どれもとても聴きやすく楽しめる曲ばかりでした。

Ⅰ部最後の曲はガルの「二つのマンドリンのためのソナチネ」。
この曲では片岡先生に代わって桝川千明さん登場。ところが曲紹介のお話に夢中になるあまり、すっかり桝川さんの紹介を忘れる宮武さん。「自己紹介していいですか…?」と桝川さん。客席から笑いがこぼれた一コマでした。そんなリラックスムードの中で演奏スタート。先ほどまでの曲とは打って変わったダイナミックな演奏で、お客さんの中には「あれはホントに同じマンドリンですか?!」と驚かれる方もいらっしゃるほど。桝川さんらしい開放的な音色に、ガルのリズミカルな曲想が合っていて素晴らしい演奏でした。

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ここでひとまず休憩。
ワインが振舞われ、音楽話に興じるお客さんたち。今回はお互いにお知り合いが多かったようで、ひときわお話に花が咲いている様子でした。ところが、そのワインとお話が後々あだに…。もともと満員で熱気がすごかった上、さらにワインでお客さんが上気。いっそう部屋の温度が上がり、出演者はみな一様に調弦に苦しむハメに…。


そんな中、第Ⅱ部へ。
Ⅱ部の1曲目も、同じくガルの「組曲」から。
桝川さん、宮武さんに片岡先生が加わり三重奏に。普段あまり目にしない異色の組み合わせだけに、三者三様の音楽が交じり合い、聴きなれたガルの曲がまた新しく聴こえました。ちなみに宮武さんの話によれば、ガルは母国のオーストリアでは評論家として有名で「作曲してたの?」と驚く音楽関係者も多いとか。
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最後は小林薫さんのマンドロンチェロを加え四重奏に。
曲はパーセルの「シャコンヌ」。
作曲家で長生きした人は少ないのですが、このパーセルも例外ではなく、夫婦喧嘩の末凍死するというなんとも悲しい最後を遂げています。「もし、もう少し長生きしていれば大作曲家になったはず」と宮武さん。それほど曲は独創性にあふれており、弾いていてその独創性ゆえに驚くこともあるとか。残念ながら私はその独創的な部分に気づけなかったのですが、小林さんが加わったことで一層厚みを増したアンサンブルを楽しむことができました。

終曲はモーツァルトの「組曲 第8番 ニ長調」。
モーツァルトといっても、これはお父さんのレオポルドが6歳のモーツァルトに書いた曲。教育者として様々な教則本を書いたレオポルドですが、今回はその教則本に習った弾き方を試みたとのこと。モーツァルトからは想像つかないような、ほとんどバロックに近い曲でした。終楽章に向けて疾走感のある曲で、最後を飾るにふさわしい演奏でした。

アンコールはレスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア」から「パッサカリア」。
それぞれのパートが同じ主題を代わる代わる演奏する様は聴き所満載。お腹いっぱいのアンコールでした。
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打ち上げには作曲家の内藤さんをはじめ、たくさんの方々にご参加いただき、とても興味深いお話をたくさん伺うことが出来ました。
話音倶楽部は、打ち上げも含めて話音倶楽部です。少しでも興味をもたれたお客さんは、みなさま遠慮なさらずに是非打ち上げにもご参加下さい。                     (石田 記)

●プログラム● -----------------------------------------------------------------

第Ⅰ部
【マンドリン二重奏】
<宮武省吾 & 片岡道子>
  ・ヴィンナーソナチネ6番  ・・・W. A. Mozart
   Die Wiener Sonatinenn
  ・内藤正彦作品「虫媒花」「冬虫夏草」その他
<桝川千明 & 宮武省吾>
  ・ソナチネ(二つのマンドリンのための)  ・・・H. Gal
   Sonatine für twei Mandolinen op.59 Nr.1

第Ⅱ部
【マンドリン三重奏】
<桝川千明 & 片岡道子 & 宮武省吾>
  ・組曲(三つのマンドリンのための)  ・・・H. Gal
   Suite für drei Mandolinen Op.59 Nr.2
【マンドリン四重奏】
<マンドリン:桝川千明・片岡道子  マンドラ:宮武省吾  マンドチェロ:小林 薫>
  ・ハンガリー風ロンド  ・・・J. Haydn
   Rondo allʼongararese
  ・シャコンヌ  ・・・H. Purcell
   Chacony
  ・組曲 第8番 ニ長調(ウォルフガングのために)  ・・・ L. Mozart
   Suite Nr.8 d-moll für Wolfgang  (編曲:K. Wölki)

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