午後3時開演
出 演: 柴田高明(マンドリン)
柴田高明さんをゲストにお迎えするのはこれが2回目。
部屋(会場)に入るなり、「何か、変わりましたね。前は床が絨毯でした」と柴田さん。
改装したのは2002年。前回(第9回話音倶楽部2000年7月22日)の出演からもう7年も経っているんですね。
改めて月日の経つ早さを感じました。
今回は、こちらからの急なリクエストで、レクチャーコンサートのような進行にしていただきました。
内容は、マンドリンの歴史や曲の背景、ドイツ留学時代のお話など。
来月ドイツのマンドリン講習会に参加する方は、特に興味深く耳を傾けていらっしゃいました。
普段、演奏会のトークでは笑いを取ることを考えていらっしゃるとか。
この日は、話せば話すほど専門的な方向にいきました。
1曲目はバロックマンドリンでの演奏。
使用された楽器は、大きい音が鳴るように改良された型だそうです。
羽根のピックで紡ぎ出される音色は、とても優しく愛らしく、包み込まれるような雰囲気でした。
旋律楽器は通奏低音と共に演奏することが多く、無伴奏曲はとても少ないとか。
2曲目以降はドイツマンドリンでの演奏でした。
レオーネの曲は、「マンドリンでこういう音が出せる」ということを表す変奏になっているそうです。
「小組曲第1番」は、前奏曲・サラバンド・マーチ・舞曲、という短い4楽章から成った曲。
ドイツマンドリンは”カサカサ・もこもこ”とした音色、というのが今までの印象でしたが、柴田さんの演奏を聴いてイメージが変わりました。
イタリアマンドリンと響きは違うけれど、決してカサカサでは無い。
1部の最後はヘッセの曲。
マンドリン独奏コンクールの課題曲だったので、その当時よく聴いた記憶があります。
特にこういう曲はドイツマンドリンの響き方がぴったりだと思いました。
休憩中、トークの内容が真面目過ぎでは、と控え室で心配する柴田さん。
みんなが真面目に聞き入っているのを、反応が薄い、と気になさったようです。
興味を持って聞いているからこのまま続けて、と片岡先生。
休憩を挟んで、2部の1曲目はシュトラウスの曲。
「詩篇」という意味のタイトルのこの曲集は、マンドリン独奏の教育用の目的で作られたものだそうです。
日本の楽器店でも手に入るように柴田さんが手配されたとのことでした。
休憩に飲んだワインの効果か、客席から質問が出るようになり、和やかなムードに。
柴田さんは、どんな疑問にも丁寧に答えてくださいました。
次は、桑原先生の作品を2曲。
「無窮動」は、マンドリンならではの技法とバイオリンではできないようなことの組み合わせの曲だそうです。
「無言の扉」は、敢えて解説無しで演奏。息詰まるような迫力でした。
演奏後に、桑原先生が亡くなる直前の作品であること、ご自身(柴田氏)が、楽譜を音楽に変えて行くうちに、死に対する恐怖や叫びなどをこの曲から感じたとのお話がありました。
最後は、この時代のテクニックを詰め込んだというカラーチェの「大前奏曲」で華やかに。
アンコール、となったところで、片岡先生が、
1760年ジュゼッペ・ビナッチャ製作のマンドリン(本物のガット弦を使用)を柴田さんに渡し、
急遽1曲披露していただくことになりました。
本物はチューニングに時間がかかるので、2000年にAlfredWoll氏にオーダーしたレプリカを使い
レオーネの曲を演奏。
2曲目は、バロックマンドリンでカッチーニ作曲の舞曲、
最後はドイツマンドリンで「アフォリスメンより葬送行進曲」を。
3種類の楽器の音色と、ドイツでの研鑚の成果、
そして楽しいお話に観客が惹き込まれた2時間半でした。 (森 記)
●プログラム● -----------------------------------------------------------------
第Ⅰ部
・Libro per Mandora (バロックマンドリン) ・・・M.カッチーニ
・アリアと変奏 第7番 ・・・G.レオーネ
・小組曲 第1番 ・・・O.ケルベーラ
・6つの前奏曲より 第5番、第6番 ・・・L.W.ヘッセ
第Ⅱ部
・アフォリスメンより ミロンガ、舞曲 ・・・M.シュトラウス
・無窮動 ・・・桑原康雄
・無言の扉 ・・・桑原康雄
・大前奏曲 ・・・R.カラーチェ
アンコール
・アリアと変奏 第7番 (18世紀マンドリン) ・・・G.レオーネ
・舞曲 (バロックマンドリン) ・・・M.カッチーニ
・アフォリスメンより 葬送行進曲 (ドイツマンドリン) ・・・M.シュトラウス
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