片岡マンドリン研究所
話音倶楽部
2006年10月29日  第38回話音倶楽部

出演:玉木宏樹(バイオリン)
    三宅美子(ハープ)

第38回話音倶楽部のゲストは、ヴァイオリニストであり作曲家でもある玉木宏樹さんとハープ奏者 三宅美子さんのお二人です。 純正律音楽にこだわりをもって音楽活動を続けていらっしゃる玉木さんは、純正律音楽研究所の主宰者でもあります。

第38回話音倶楽部 第38回話音倶楽部

独奏、二重奏ともに、純正律のヴァイオリン、純正律と合わせやすいといわれている中全音律(ミーン・トーン)のアイリッシュ・ハープによる演奏です。 アイリッシュ・ハープは、オーケストラなどで使われるグランド・ハープより小型で、音を半音上げるときにはペダルではなく弦の上についているレバーで操作をします。 弾きながらレバーの上げ下げをするので、とても忙しそうに見えました。 演奏の合間にはお話だけでなく楽しい芸当もご披露いただき、客席も大変盛り上がりました。

純正律、中全音律について調べてみたのですが、要約すると、
・純正律とは、ある基本音を起点として音程が協和する(周波数の比が簡単な整数比になる)ように
 音階の各音を順に採って決定していく音律で、音階の各音が幾何学的に決定されるもの。
 良好に響き合う音の組み合わせがたくさん存在し、美しいハーモニーを生み出すことができる。
・中全音律は、5度を重ね合わせて12音を作る際に、5度の周波数比を純正な5度ではなく、
 純正よりも僅かに狭くすることにより、5度を4回重ね合わせてできる長3度の音程が純正に
 なるようにした音律のこと。
 長3度の音程が純正で完全に澄んだ響きであり、5度も純正からの誤差が少ないので、比較的
 美しく響く。
 長調の主和音が美しく響くので、和音を重視した音楽を美しく演奏する事ができる。
 ということで、純正律と中全音律が合わせやすい理由がよくわかりました。

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お話の途中で、小さなキーボードがついたハーモニー・トレーナーという機械を使って、ドミソの和音を純正律とそうでない音律で聴き比べをしました。 純正律の和音はツーというまっすぐな、うねりのない音で、そうでない和音のときは調弦が合っていなときのようにワァンワァンとうねった音がしました。 聴かせていただいたコーラスのCDでも、透明感のあるハーモニーがよく響いていました。 実際の演奏では、ヴァイオリンのメロディーを聴いていると素人の耳には違いがわからないのですが、アイリッシュ・ハープの和音がとても美しく響いていて、まっすぐに心の底に届くような、まさに癒し系の音でした。 頭痛が消えた、不眠症が直った、認知症の施設でお年寄りの徘徊がなくなったなど、純正律音楽が体や心にもたらす様々な効果について多くの報告があるそうで、研究や発表が続けられているというのも納得です。

一度お話や演奏を聴いただけで純正律とは何かを理解するのは難しく、自分で調べてみても更にいろいろと疑問がわいてきて、音律、音程というのは奥が深いものだと思いました。 いかにして美しいハーモニーを創るか、というのは、プロ、アマチュアにかかわらず、楽器を演奏する人にとっては終わりのないテーマです。

(田島 記)

● プログラム ●
/// 第1部 ///

<ヴァイオリン独奏>
・無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番第1楽章    J.S.バッハ
<二重奏>
・ヴァイオリン協奏曲第3番第2楽章       W.A.モーツァルト
・悠久のケルト                 玉木宏樹
・天の川                    玉木宏樹

/// 第2部 ///

<二重奏>
・春へのあこがれ                W.A.モーツァルト
<ハープ独奏>
・庭の千草                   アイルランド民謡
<二重奏>
・ケルト幻影                  玉木宏樹
・雪柳                     玉木宏樹
・虹のクロノス                 玉木宏樹
・クロノスの彼方                玉木宏樹
・第3の夢                   玉木宏樹

アンコール
・王宮の花火の音楽より 歓喜          G.F.ヘンデル