片岡マンドリン研究所
話音倶楽部
2006年03月11日  第36回話音倶楽部

出演:向江 昭雅(リコーダー)
   風早 一恵(ヴィオラ・ダ・ガンバ)

第36回話音倶楽部のゲストは、リコーダー奏者の向江昭雅さんとヴィオラ・ダ・ガンバ奏者の風早一恵さんです。 音大時代から一緒に活動していらっしゃるお二人は、演奏もトークも呼吸ぴったり。 レースやギャザーで飾られた貴族のような衣装に身をつつみ、楽しいお話を交えながら、二重奏とそれぞれの独奏を聴かせてくださいました。

第36回話音倶楽部 第36回話音倶楽部

ヴィオラ・ダ・ガンバは15世紀に生まれ、スペイン、イタリアからヨーロッパ全土へ広まりました。 「ガンバ」イタリア語で足のすねのあたりを意味します。 チェロのようなエンド・ピンがついておらず、楽器をすねの内側、ふくらはぎのあたりで支えて演奏するのでこの名前がついたそうです。 6弦の楽器と、低音が1本追加された7弦の楽器があり、風早さんは7弦の楽器を使っておられます。 より開放弦に近い音を出すためにフレット(金属ではなくガットを巻きつけたもの)が6つついています。ネックの半分くらいまではフレットがあり、あとはフレットなし、というのが不思議でした。 弓はお箸のように持ち、毛の部分を中指で微妙にコントロールしながら音を出します。

リコーダーは、音楽の授業で習った方も多いと思いますが、穴は全部で9つ。 下向きの穴は指では押さえませんが、現代音楽では膝を曲げて腿で押さえて演奏することがあるそうです。 10世紀にヨーロッパで生まれ、バロック時代にフルートといえばリコーダーのことを指したそうです。 この日演奏されたアルト・リコーダーはヨーロッパつげ、ソプラノ・リコーダーはローズウッドでできているそうです。 他に楓、梅、林檎、象牙などが使われるそうです。 向江さんはリコーダー製作もされていますが、新しいリコーダーは音も新しいので、演奏には自作の楽器ではなく、20年前くらいに製作されたリコーダーを主に使っていらっしゃるとのことでした。

第36回話音倶楽部

1曲目はアルト・リコーダーとガンバの二重奏で「イタリアン・グラウンド」。 ガンバが同じパターンの低音をアレンジしながら演奏し、シンプルなメロディーとその変奏が繰り返される曲です。 ガンバは思っていたより大きい音で、リコーダーの装飾音がとても美しかったです。 2曲目「イギリスのナイチンゲール」はソプラノ・リコーダーによる独奏でした。 春らしく明るい曲で、鳥がさえずりながら会話しているようでした。 3曲目は有名な「グリーン・スリーブス」。 この演奏会では歌はなしですが、英国国王ヘンリー8世の作詞、作曲という説もあるそうです。 ガンバのピチカートがリュートのような優美な音色で素敵でした。 1部最後の曲はヘンデル作曲の「リコーダー・ソナタ ヘ長調」。 最初のパストラーレはイエス・キリストが生まれる前の世界、次の早いテンポの曲はイエスの生誕を祝う曲、次のシチリアーナはイエスがゆりかごで眠っているところから磔刑へ進んでいく様子を描いているそうです。 バロック音楽の音型には全て意味があり、十字架を意味する音型も出てくるというお話も大変興味深かったです。

■ガンバは湿気で音が下がりやすくなるため、ワインサービスの間にスタジオの空気を入れ替えて2部が始まりました。 1曲目は「リコーダー・ソナタ ニ短調」。 作曲者のフィリドールの本業は弁護士だそうです。2曲目はガンバの独奏です。 作曲者のアーベルは、ガンバからチェロに楽器が移行していく時代の作曲家で、モーツァルト親子とも親交があったそうです。 ガンバの独奏は優雅でありながら、ドラマチックでもありました。 プログラム最後の曲は、マンチーニ作曲の「リコーダー・ソナタ ニ短調」。 2部1曲目と同じニ短調なのに雰囲気が違うのは、演奏前の解説のとおり、ナポリの出身のマンチーニが使用しているナポリ和音のせいなのかなぁ、と思いなが ら聴いていました。 歌うように体を揺らし、魂を吹き込むように演奏される向江さんの姿が印象的でした。 お客様の熱い拍手にこたえ、ベルサイユ宮殿で活躍したというオトテール作曲の「サラバンド」「メヌエット」の2曲がアンコールに演奏されました。

演奏会後の打上げでは、風早さんが希望者を大事な楽器に触らせてくださいました。 足に乗せてバランスを取るのがなかなか難しかったですが、音を出すと、振動が体中に伝わって心地よかったです。 楽器紹介のために風早さんがプログラムにはない曲を弾いてくださったり、書ききれないほどの音楽や曲についての解説をテンポよく楽し くお話してくださり、まさに音楽とお話を存分に楽しませていただいたひとときでした。
(飯田 記)

● プログラム ●
/// 第1部 ///

・イタリアン・グラウンド    ロバート・カー
・イギリスのナイチンゲール   ヤコブ・ファン・エイク
・グリーン・スリーヴス     作者不詳
・リコーダー・ソナタ ヘ長調  ジョージ・フレデリック・ヘンデル

/// 第2部 ///

・リコーダー・ソナタ ニ短調  アン・ダニカン・フィリドール
・ヴィオール・ソナタ      カール・フリードリッヒ・アーベル
・リコーダー・ソナタ ニ短調  フランチェスコ・マンチーニ