片岡マンドリン研究所
話音倶楽部
2004年10月03日  第29回話音倶楽部

出演:都筑道子と仲間達 Vol.2
   都筑道子(コントラバス)、稲垣聡(ピアノ)

昨年好評だった「都筑道子と仲間達」のコンサートシリーズの2回目です。 今回はピアノの稲垣聡さんとの共演でした。 お2人は大学時代のお友達だそうです。

第29回話音倶楽部 第29回話音倶楽部

1曲目はプロートの「ソナタ1963」。 マンハッタン音楽院卒業リサイタル用に、コントラバス奏者であるプロートが作った曲だそうです。 クラシックとジャズの融合した曲で、ジャズでは通常「アドリブ」と記されるだけの部分も、作曲者がほとんど譜面に書いているとのことでした。

プログラムを見ると、「ソナタ1963」の次は、「クイズ 〜これであなたもコントラバス通!?〜」と書いてあります。 お客様も、どんな趣向かわくわくどきどき。

クイズは、「曲名当てクイズ」でした。 有名な曲のコントラバスのパートのみをまず弾いて、正解者がいなければ、ピアノでオーケストラのメロディー部分を加えていくという出題方式です。 「コントラバスがその時代の音楽ににどういう役割を担っていたか」ということや、「オケの中でチェロを伴奏にして初めてコントラバスがソロをとった曲」など、曲にまつわるお話も楽しかったです。 シューベルトの「交響曲9番」、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」、ホルストの「惑星」など、クイズの進行と共に、15曲の「聴き所」を披露してくださいました。

休憩時間は、ワインとチーズで楽しいおしゃべりがはずみます。 席が近いお客様同士、お客様とスタッフ。このひとときをはさんで、休憩後はより一層なごやかな雰囲気になります。

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2部は、ピアノ独奏で始まりました。 リスト作曲の「エステ荘の噴水」、「『リゴレット』による演奏会用パラフレーズ」。 演奏の前に、リストの派手な女性関係、曲の背景など、わかりやすく解説してくださいました。 稲垣さんの、汗の飛び散るような渾身の演奏に、客席はすっかり魅了されました。 最後は、「グランドアレグロコンチェルト」。コントラバスとは思えないような華麗でクリアな早回しと、床が振動するほど力強い音にただただ聴き入るばかりでした。 最前列に座った学生コントラバス奏者達の、真剣な熱い視線が印象に残りました。

アンコールは、お2人でベートーベンの「ソナチネ」、次にピアノ独奏でリストの「愛の夢」でした。 いつまでも鳴り止まない拍手にこたえて、マイヤーズの「カヴァティーナ」を演奏してくださいました。

この曲は、戦争によって人生を狂わされていく若者達を主人公に、ベトナム戦争の傷痕を生々しく描いた映画「ディア・ハンター」の主題曲です。 この映画の内容をふまえて、「平和への思いを込めて演奏します」とひとこと添えられての演奏は、私達の心に深く沁み込んでいくようでした。

オーケストラを構成する弦楽器の中で、低声部を受けもつ楽器は一般的に馴染みが薄くなりがちな存在ですが、その楽器が主役となり奏される音楽を聴くと、分厚い音色 と多彩な表現力に深い感動を覚えます。 来年には「都筑道子と仲間達」第3回が予定されています。どうぞお楽しみに。